心の教育推進基本方針

心の教育推進基本方針
 兼 学校いじめ防止基本方針

はじめに  本校の心の教育

 長崎精道小・中学校は、学校法人精道学園の「建学の精神」に基づき、児童生徒一人ひとりのかけがえのない命、人格を尊重し、知性と情意、意志の三分野の調和のうちに、全人格的教育を施すよう研究、実践を行う。
全人格的教育ということは、知識や技能の伝授のみならず、人間霊魂の本性的能力と霊的価値に根差した知的、霊的形成を行うということである。そのために、まずは児童生徒が、自らを愛し、その命を尊ぶと共に、他人を愛し、その命を尊ぶように、自らの才能に気づき、使命感を見出すように、そして、人々との交わりのうちに、真の自由と責任を有する人間として、正義と愛徳に向かう、相応しい行動ができるように、学校教育全般において導いていくことが望まれる。

 そのためには、学習指導面、生活指導面において、良心、人間徳、宗教的徳など、精神的諸価値を意識し、内容を深めていくと同時に、学校生活の諸場面において実践していくように、具体的な手立てを講じる必要がある。集会や授業などの集団的形成、個人指導や個別面談などの個人的な形成、更には普通に行われる会話、遊びなどの触れ合いの時間を含め、各場面、各段階に適切な方法、指標を持って、教授していくことが可能である。

知育は徳育を土台として真に効果を得る。また知識・技能の発揮は、倫理的判断のもとになければ、益するところがない。この基本方針では、教科教育の専門分野について他に譲るとして、徳育(心の教育)の内容を領域として、その指導内容、計画、体制についてまとめるものとする。

Ⅰ 基本方針

 心の教育は、確固とした人間観に基づく霊的(精神的)形成と言える。人間の存在レベルから行動レベルに亘るもので、各自の霊魂の尊厳、良心や知性、意志、感情などの霊魂の諸能力と行動の関係、人格完成における人間間の相補性や連帯の意義などを理解し、研究し、推進していかなければならない。
カトリックの精神を理念とする本学園の建学の精神が提供する教育目標や課題には、理想とする人間モデル、霊的形成の主要な方法が示されており、それは全教育活動の中核をなしている。

【学校教育目標】
カトリックの精神により、知・情・意(行動)の三分野の調和のとれた全人格的な教育によって真の自由の精神を培い、本当の「しあわせ」を知り、味わい、そして周りの人々にそのしあわせを与えることのできる女性を育成する

【理想とする児童生徒像】
〇自分の価値、自分の能力(知性、技能、感性など)に気付き、それを伸ばし、発揮し、自信をもって生きていける人
〇勤勉、誠実、単純、素直、謙遜、自然さ、剛毅、寛容などの精神的価値を身に付けるために、たゆまぬ努力ができる人
〇宗教的考え方と道徳基準をしっかりと持ち、自らの良心に従って行動できる人
〇社会生活の中で対処すべき権利と義務を、正しい価値基準に基づいて、自己の責任において自由に行使できる社会人
〇誰をも理解し、受け容れ、尊敬するひろい心を持ち、それを実践する国際人
〇生活の基礎となる体力や知識を鍛え、それを生涯役立たせていくための思考力、応用力、創造力を身につけている人
〇感情を豊かに表現できると共に、ネガティブな感情や気持ちや性格をコントロールすることのできる意志の強い人

【学習指導・生活指導の基本ステージ別目標】
1st ステージ:小1~4 基本を身につけ 自ら考えて行動する
2nd ステージ:小5~中1 正しい価値観を身につけ 自主的に行動する
3rd ステージ:中2・3 価値基準を生かしイニシアティブと 責任感を持って行動する

Ⅱ 具体的な取り組み

【徳育(心の教育)の概要】

A 宗教・道徳において
お祈り 良心の糾明 宗教の授業 特活・道徳の授業 ミサ聖祭 説教・講話 個人指導

B 学級経営と生徒指導
児童生徒を取り巻く環境実態に留意し、面談、助言などの個別及び学級全体の指導

C 教科内・教科間設定のいのちの教育
1st ステージ: あかちゃんのたんじょう、生活と健康、10 歳の誕生日プレゼント
2nd ステージ: 3 教科タイアップいのち「命の学習」、成長した私と親への感謝、第2 次性徴
3rd ステージ: 愛・結婚・新しい命、社会倫理(家庭、時事問題など)

D 各種活動
平和教育 国際教育 野外合宿活動 職場体験学習 保育実習
元気野菜活動 ボランティア活動 縦割り活動 体育行事 文化行事

E 健康・安全面
健康観察 アレルギー調査 給食の特別食 安全教育 避難訓練

F 規律、学習・生活習慣の徹底
制服 所持品 宿題・自主学習 提出物 ノーチャイム制

G 教職員定期作業・会議・研修
各種連絡会議:児童生徒の学習・生活支援
各種アンケート:年に数回の生活アンケート実施 3 学期に学校評価アンケート実施

H 定期的な家庭との連携
クラス懇談会 個人面談 学校通信 学級通信 相談室

【年間の修徳目標とモットー】

課題となる人間徳や価値観を、年間で12 に分類、設定し、毎月の目標として提示する。その内容は全校で共有し、全教員は修徳に意識して指導、支援にあたる。
4月  礼儀  きれいな挨拶
5月  敬愛  見つけよう、周りの人の良い所
6月  慎み  美しい言葉、美しい態度
7月  従順  「はい」という素直な心
夏休み  自由と責任  自分で考え、行動しよう
9月  勤勉  けじめと落ち着き
10 月  謙遜  ふりかえろう、心と態度
11 月  誠実  だれも見ていなくても
12 月・冬休み  寛容  愛する心、ゆるす心
1月  清貧  落とし物ゼロ、無駄な物ゼロ
2月  根気  最後までやり通そう
3月  感謝  「ありがとう」を、言葉で、態度で

Ⅲ 非常事態の対応

 児童生徒が、家庭で、学級内あるいは学校内、更には地域で接する人々と、友好な人間関係を構築することが望まれる。学校内では、学級活動や縦割り活動を通して、様々な経験を積み上げながら、自然に交友関係ができていく。親密さの程度は異なることもあるだろうが、気が合う、合わないにかかわらず、他人の人格の尊厳を大事にし、自由を尊重できるよう導きたいものである。一人ひとりパーソナリティは違っていて当然であるから、性格や意見、考え方の差異を認め、理解し、受け入れるよう促すと共に、豊かなコミュニケーション力を育てたい。また、感謝の心と態度、自己の非を謝る素直な心と態度、相手の過ちを許す心と態度、諭す勇気と態度を養うことも課題となる。それには特に、友愛(思いやり)、誠実、信頼、善悪の判断、正義感、剛毅、寛大などの徳目が関連してくる。

児童生徒は学校生活において、人間関係構築の方法も学んでいるので、交友上の喜びや悩みを経験するだろう。時には慢性化した悩みを抱え込んだり、突発的なトラブルなどもあり得る。教師は、日常の心の教育のみならず、不定期に、臨時的に、指導支援していく場面も多く想定される。

【児童生徒のSOS】

 家庭で、学校で、地域社会で、子どもは様々な影響を受けて生活している。通常、衣食住に事欠くことなく、心身ともに健全な生活を送っている場合がほとんどだろうが、一時期、あるいは長期的に、この心身の健康を脅かす事柄も出てくる。大小様々な困難は、後々に解釈すると、成長期に特有の意味合いを帯び、精神的実りと受容されるものも当然のことながらありうるが、まだ成長半ばの児童生徒が、一人で抱えきれない精神的、身体的重荷、理不尽な困苦などで、生命の危険、心身の健全な成長の疎外、精神的ショックに陥ったり、その可能性が見受けられる場合、いち早い保護や指導、支援、助言することが求められる。

① 児童生徒の精神的、身体的危機
交友上のトラブル ・いじめ ・家庭生活の急変 ・重病の兆し ・DV ・不登校(長期欠席)など

②危機(SOS)の早期発見の手立て
◆日常的: 健康・学習・交友・生活の様子の観察 児童生徒の話を傾聴
個人指導 児童生徒の話を傾聴 様子の観察
気になる事柄について報告→関係者会議→記録

◆定期的: 小・中別連絡会議で確認し情報共有する
何かある場合 報告 情報交換 関係者伝達 分担 対応 記録
学校生活アンケート実施→集計→結果確認→対応
保護者面談 年2 回 1 学期中旬~下旬 2 学期の中旬~下旬

◆臨時的: 必要に応じ緊急/即日/不定期に関係者会議や臨時連絡、対策会議開催
報告→情報交換→分担→対応→記録・・・

③連絡会議各種
〇定期小学校連絡会議/定期中学校連絡会議
〇臨時関係者会議 担任を含む関係者のみの情報伝達会議
〇臨時連絡・対策会議 該当児童生徒の学年担・副担任 管理職、他 関係教職員
〇カウンセラー連携会議 必要に応じカウンセラーを交えて連絡・対策会議

【児童生徒の危機】~迅速・丁寧・連携~

発見、通報などにより、危機が認められた場合、その教職員は一人で問題を抱え込むことなく、適切な相手に報告し、関係者会議や専門家への相談を行い、組織的に対応にあたる。区分に明確な保証はないが、内容次第でレベル1 レベル2 レベル3 重大事態に区分することができる。

◇レベル1:児童生徒が自分で解決できる内容
保護者への一度の電話連絡程度で解決できる内容
学年担任や該当教職員で解決できる内容 〔関係者会議〕

◇レベル2:児童生徒が解決に抵抗があり、安心を得るために長期を要する内容
一度の電話連絡では解決できず、複数回のやり取りを伴う内容
保護者(場合によっては両親)との面談が必要と思われる内容
教頭との連携が望まれる場合 家庭訪問の必要性も想定される
〔小・中連絡会議 臨時連絡・対策会議〕

◇レベル3:児童生徒のショックが大きい、安心感が長期的に得られない内容
保護者との面談が複数回にわたる場合
校長との連携が望まれる場合
地域機関への連絡・連携が必要となる場合
学級、学校保護者連絡会の開催も想定される
〔小・中連絡会議 臨時連絡・対策会議 SC 地域機関〕

◇重大事態:児童生徒の命、心身に深刻な被害が生じた場合
(自殺 大きな傷害 大きな金品被害 精神的疾患等)
長期間の欠席を余儀なくされる場合
(目安として年間30 日 一定期間連続して欠席の場合も含む)
長崎県いじめ防止基本方針p26 による場合
※重大事態がいじめによる場合学校は学校設置者(学校法人)へ報告
設置者は県(学事振興室)に連絡。同方針p26~31 参照。
〔小・中連絡会議 臨時連絡・対策会議 SC 地域機関 県機関 学校設置者〕

【いじめについて】
 「いじめ」は卑怯な行為であって、相手の心や体の尊厳・尊敬を欠き、自らの心も傷つける行為である。十戒の第五戒“殺すなかれ”の教義の範囲にも触れる、人間として避けるべき行為である。
いじめを未然に防ぐためには、肯定的に考えると、
〇一人ひとりが安心して学校生活を送るように、
〇好ましい人間関係を育んでいくように、
〇正しい生命尊重と人権尊重の基本を学ぶように、
教育することが重要であり、これは心の教育の基本と重なる。しかしながら、昨今、いじめ問題が深刻化している現状に鑑み、いじめに対する対応と措置について具体的方策を立てておく必要がある。

①「いじめ」とは?
〇世界的ないじめの定義概略:力関係の非対称性(アンバランス)の悪用、乱用
〇いじめ対策防止推進法による定義~第2条より~:
児童等に対して、該当児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの

【具体的ないじめの様態】例
・冷やかし からかい 悪口 脅し文句 嫌なことを言われる
・仲間はずれ 集団による無視
・軽くぶつかられる 遊ぶふりをして叩かれたり蹴られたりする
・ひどくぶつかられたり、叩かれたり蹴られたりする
・金品をたかられる
・金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする
・嫌なこと恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする
・パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる など

②いじめに対する対応
交友上のトラブルが、「いじめ」によるものと思われたり、または「いじめ」が発覚した場合、以下の点に留意しながら、対応と措置にあたる

初期対応:
〇現場を見た―――即行為を阻止 説諭 連絡
〇相談や通報を受けた――― 傾聴し具体的事実を把握 情報収集
→連絡、連携、関係者会議の開催。

組織的対応:関係者会議 臨時連絡・対策会議の開催
報告→役割分担→実行(情報調査、情報収集、報告、連絡、指導、支援等)
再会→情報交換・修正→分担確認→実行・・・・・・(繰り返し) 記録
〇児童生徒への対応 ・個別的:被害側 加害側 いじめ協力者 通報者 傍観者
・集団的:学校,学級,部活,クラブ所属で該当者以外の児童生徒
※2次被害にならないように
〇保護者への対応 加害側 被害側 その他関係者
〇地域機関との連携 警察 法務局 病院 法律事務所 長崎県管轄部署 等
〇臨時連絡・対策会議(委員会)の招集と開催

事実調査の方法:聞き取りやアンケート
〇その行為は:When いつ Where どこで Who 誰が 誰と What 何を How どのようにであったか。
〇学校生活アンケート 各学年か/全学か、対象を検討し実施。

事実関係の把握:
事実関係を時系列的に把握。客観的事実を把握。被害側、加害側の心情に留意。

生活支援及び関係改善の働きかけ:
該当者の事実確認
今後の学校生活について、相手との間柄についての「着地点」を聞きながら、臨時的長期的な支援を継続。

令和5年度 改定